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木もれびの森
粘菌シリーズ
粘菌観察日誌 出現場所
2025年の6月から10月にかけて、林の中の決められた経路で粘菌の定時定点観察を試みることにしました。相模原市慰霊塔を中心とした周辺約3kmの林の中の散策路を毎日午後4時から6時にかけて歩き、その時目にした粘菌の写真を撮りました。出現した日付と見つけた粘菌の全写真はこちらのページに掲載されています。
図1に散策路の地図と出現場所をまとめました。出現場所のほとんどは道端に置かれた朽ちた伐採木です。他に朽ちた切り株や生きた植物の葉の上にも出現します。全散策路で出現が見られるということは、この散策路ではどこにでも伐採木があることを意味しています。
図1 粘菌出現場所
表1に各場所に出現した粘菌の種類と数をまとめました。粘菌は広がりを見せて複数個現れるので、1箇所に出現した複数の粘菌はまとめて1体とカウントしました。粘菌の種類を表す略号は次のとおりです。
SU ススホコリ類;MS ムシホコリ;TS ツノホコリ;ED エダナシツノホコリ;TA タマツノホコリ;NA ナミウチツノホコリ;UT ウツボホコリ類;WU シロウツボホコリ;YU キウツボホコリ;MR ムラサキホコリ類;KU クダホコリ;MA マメホコリ;UN 未同定
最も多く出現するススホコリ(SU)はどの場所でも見られます。他の種類の粘菌も広範囲で見られますが、クダホコリ(KU)は若松地区でのみ、またウツボコリ(UT)は東大沼地区でのみ見られました。キウツボホコリ(YU)は若松B07地区で異常に多く出現します。これは同じ伐採木に繰り返し出現したためです。
表1
次から次へと複数の粘菌が出現するホットスポットと呼べるような伐採木が存在しました。その例を二つ紹介します。
<若松B07地区の伐採木>
写真1は若松B07地区にある伐採木です。樹皮から判断すると杉と思われます。この樹皮の表面に6月半ばから各種粘菌の出現が見られました。ただ、7月4日に甲虫の幼虫探しをしている子供達(?)に木全体が写真2のように解体されてしまいました。それでも7月12日以降、この木片の上に再び粘菌が出現しました。
図1に伐採木上の粘菌出現箇所を示しました。解体されても全体の形は保たれています。上部の三つの塊は、解体されて生じた木片です。
図1 伐採木上の粘菌出現箇所
粘菌の種類ごとに、出現した日付順に写真を載せました。ムシホコリとススホコリは変形体、それ以外は子実体です。ススホコリはいずれもシロススホコリと思われます。
ムシホコリ
ススホコリ
タマツノホコリ
シロウツボホコリ マメホコリ
なお、この伐採木と道を挟んで置かれている伐採木には、キウツボホコリ(YU)のみが頻繁に出現しました(こちらを参照)。
<東大沼E02地区の伐採木>
1箇所に複数の粘菌が出現した例は、東大沼E02地区の伐採木でも見られました。朽ちているため何の木かは分かりません。この伐採木では同じ箇所にほぼ同じ時期に4種類の粘菌が出現しました。写真3に示すように、6月19日に全体がムラサキホコリ科の粘菌の子実体(MR03s)に覆われ、下部に白色の未同定の粘菌(UN04)が見られます。同じ場所を6月22日に見ると、写真4のように黄色のススホコリの変形体(SU03h)に覆われました。
図2にこの伐採木上の粘菌出現箇所を示しました。上の写真は左端の部分です。
図2 伐採木上の粘菌出現箇所
粘菌の種類ごとに、出現した日付順に写真を載せます。粘菌名末尾のhは変形体を、sは子実体を意味します。
ムシホコリ
ススホコリ
タマツノホコリ
ムラサキホコリ 未同定粘菌