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木もれびの森
粘菌シリーズ
粘菌観察日誌 出現時期
2025年の6月から10月にかけて、林の中の決められた経路で粘菌の定時定点観察を試みることにしました。相模原市慰霊塔を中心とした周辺約3kmの林の中の散策路を毎日午後4時から6時にかけて歩き、その時目にした粘菌を写真に撮りました。出現した日付と見つけた粘菌の全写真はこちらのページに掲載されています。
出現した日ごとに各粘菌の数を表1にまとめました。粘菌は広がりを見せて複数個現れるので、1箇所に出現した複数の粘菌はまとめて1体とカウントしました。各粘菌で変形体と子実体の両方が見つかった場合は、変形体が見つかった日を出現日としてカウントし、変形体あるいは子実体しか見つからなかった場合は、それぞれが見つかった日を出現日としてカウントしました。灰色の欄は、雨天や用事のため散策に行かなかった日です。
最も出現頻度が高いのはススホコリ類(SU、100体)とムシホコリ(MS、43体)というススホコリ属の粘菌です。ついで、ツノホコリ類(TS、19体)、エダナシツノホコリ(ED、28体)、タマツノホコリ(TA、36体)、ナミウチツノホコリ(NA、35体)といったツノホコリ属の粘菌も多く出現します。ウツボコリ属では、ウツボホコリ類(UT、12体)、シロウツボホコリ(WU、24体)、キウツボホコリ(YU、26体)が見られます。他に、ムラサキホコリ類(MR、32体)、クダホコリ(KU、18体)、マメホコリ(MA、20体)の出現が見られます。これらの粘菌には属しない未同定粘菌(UN、16体)も見つかりました。ススホコリ属やツノホコリ属の粘菌は、変形体と子実体の色が黄色や白色なので見つけやすい一方、ムラサキホコリ、クダホコリ、マメホコリの子実体は紫色・黒色・茶色と目立たないので見逃している可能性があります。
いずれの粘菌も7月25日以降8月末まで出現が抑えられる傾向があります。図1に粘菌の総出現数、最高気温、降水量の経日変化を示しました。8月10日から3日間雨が降った後、一時的に出現が見られることから、出現数の減少は高温のためというよりは、降水量が少なくなったためと考えられます。ススホコリが他に比べて出現数が多いのは、乾燥に強いからということも考えられます。他の粘菌がほぼ見られなくなった8月下旬でもススホコリは毎日出現しています。10月に入ってもススホコリ属やツノホコリ属は出現しましたが、10月10日以降見られなくなりました。
表1 粘菌の出現日 *気温と降水量はアメダスの海老名におけるデータ
図1